アタシがアンタを好きになるなんて絶対にあり得ない


夏休み前のテストが始まって、いつもより帰れる時間が早くなる。みんなはその時間でちょっと勉強したり、先生たちにバレないように遊んでる。

アタシは友達に誘われれば遊ぶけれど、今日は友達は二人とも用事があるみたいで今は、アタシは一人だ。沢山の生徒たちの帰宅の波に合わせて、アタシも帰る。

と、目の前に見覚えのある背中を見つけた。このチャンスを逃がさないように、彼に向かって走り出す。

「天澄!」

必死過ぎて、初めて名前を呼んだ。そう、ふと我に返って恥ずかしく感じる。振り返る天澄は相変わらず、涼しげな感情の読めない笑みを浮かべていた。

「……やぁ、まき。久しぶりだね?」

気恥ずかしさ耳まで赤くなったのを、どうか走ったせいだと勘違いして欲しい。息を整えるアタシを、大翔は目を細めて待っていてくれた。

「ごめん!」

目が合って直ぐ、アタシは頭を下げる。

「……なにが?」

首を傾げる天澄に、アタシは『なんでもない』なんて言って、誤魔化したくなった。天澄が気にしてないんなら、あえて言わなくても良いんじゃない?って、臆病なアタシが、囁きかける。でも、

「アタシが、無遠慮だった」

「……うん」

少し考えるように視線を動かして、天澄は頷いた。

「だから、アタシに気とか使わなくていいよ」

……あんまり素直に謝れてないのは、自覚してる。でも、上手く言葉に出来ない。ごめん。ちゃんと、言葉にしたいのに。

「そう」

天澄は短く相槌を打って、ついと目を逸らした。それを見て、『ホントは、アタシに飽きて離れただけかもしれない』なんて、嫌な予想が頭によぎる。それもそうだ。ずっと拒絶しておいて、否定しておいて、今更何を言ってるのだろう。

アンタは、アタシとこうして話すこと、まだ『嬉しい』とか、言ってくれるんだろうか。

「因みに、ホントの思惑は?」

「え……」

予想外の言葉に、思考が止まる。思惑?謝って関係を元に戻そうとか、そういうこと?そう、天澄の言葉の意味を考えていると

「勉強?見てあげるよ」

と、勝手に結論を出されて、図書館でアタシの勉強を見てくれることになった。

「……うん」

……そういえば、テスト期間だった。アイツは頭良いから、アタシが勉強を教えてもらいたくて寄って来たんだと思ったみたいだ。

……そうじゃない、のに。