アタシがアンタを好きになるなんて絶対にあり得ない


6月は雨が続く。アタシが傘を忘れて天澄と相合い傘……みたいな失態を起こさないように、毎日折り畳み傘をカバンの中に用意してた。

直感的に折り畳み傘を二つ用意していた日、天澄のやつが「傘を忘れちゃった」とか抜かした。絶対雨が降るって分かるような日に傘を忘れるとか、絶対わざとだ。アイツのことだから、アタシと一緒の傘に入ってみたい好奇心とか、そんなものだろう。

二本目の折り畳み傘をカバンから取り出した時の、アイツの動揺した顔は面白かった。すぐに「まき、さすがだね」なんて表情を取り繕って笑っていたけれど、すっごい動揺してたのは私にはわかった。

最近はよく天澄と帰る。恋人をほとんど切らしたことがないくせに、なんだか珍しい。ただ単に、アイツの興味が向くような相手が見つかってないだけか、アタシがただ、天澄が誰かと付き合ってることに気が付いてないだけかもしれないけれど。

でも。前にアタシが言った忠告にしたがって、誰か、特定の人に誠実でいようとしてるのだったら、なんとなく嬉しいような、そうでもないような、そんな不思議な気持ちになる。

横に並ぶと随分と背の高い天澄を横目で見上げた。傘のおかげで口元までしか見えないけれど、なんだか最近は楽しそうにしているような気がする。作ったような笑顔じゃなくて、心からの笑みみたいな表情をよく見るようになった。

それをなんとなく喜んでいる自分がいるのは、嫌でも認めるしかない。ただ雨が降る帰り道だけれど、天澄が楽しそうだとアタシも楽しくなってくる。

ぱらぱらと雨を弾く傘の音を聞きながら、ぴしゃと跳ねる足下の水浸しな道を歩きながら、もうちょっとこんな日々が続いたら良いかもね。なんて思ってみたり。