アタシは永瀬(ながせ)槙乃(まきの)

ある学園の二年生。

スポーツが得意な、ただの女子高生だ。

……ただ、毎日のようにある男から告白されていることを除けば。

溜息をついて肩を落とすと、

「どうしたの?せっかくの可愛い顔が台無しだよ?」

と覗いてきた。

「アンタのせいだろうが!」

と、持っていたカバンを振り回して思い切りソイツを叩こうとしたら、あっさりと避けられた。

アタシに告白してきたこの男の名前は高宮(たかみや)天澄(ひろと)

授業をサボりがちな癖に成績が優秀な、嫌なやつ。

今は4月の中頃で、みんな新しいクラスや、少し難しくなった勉強に右往左往している時期だ。

コイツとは一年生の頃は同じクラスだったけれど、今年もまた、同じクラスになってしまったらしいことに、アタシは酷く落胆した。

天澄は背が高く、顔が良い。切れ長の明るい琥珀色の目は、髪と同じ色の長い睫毛に縁取られて、唇は色っぽく弧を描く。鼻はすっと筋が通ってて高い。

黙っていれば顔はいいのになぁ、と思うくらいには顔は整ってる。人形みたいな、芸術品と言っても過言ではないほどに。というか、その顔だけでモテている節もある。

明るい色の髪は手入れをしているのか、さらさらして、いい匂いがする。スポーツや部活はやっていないはずなのに、身体もしっかりと筋肉が付いてる。

「『ボクのせい』だなんて言われちゃうと、なんだか嬉しくて興奮しちゃうね」

「……」

言動が変態じみてるところが、大幅なマイナスポイントだ。