「……付き合ってくれて、ありがとうございました」
階段を下っていると、そんな声が聞こえた。まずい、フラれてる場面に出くわしたみたいだ。
そうっと様子を伺うと、目に涙を溜めて天澄に頭を下げる女の子が見えた。「思っていたのと違う」とか、そんな理由だろうな。
アイツが、『自分と付き合ったら他の誰かとの付き合いを止める』だなんて甘い考えをしていたんだろう。でも、アイツは他の告白してきた子の告白を受けて、デートをした。それがショックでフることにした、って感じか。
「いいよ。キミみたいな子と付き合えてよかった」
なんて白々しいセリフを吐くアイツはきっと、微笑んでいる。見惚れたか逆上させたかは分からないけれど、少し頬を染めて女の子は天澄を睨み付けたから。
「心にも思っていないことを言わないでください!」
なんて叫んで、女の子はくるりと背を向けて走り去る。……まあ、アイツがふらふらしてるのも悪いけれど、アイツが嘘つきなのを見抜けなかった、ただ見た目だけで付き合いたいと願うのも、多少は悪い気もする。
「アンタ、ほんとバカだね」
女の子が見えなくなってから、アタシは声をかけた。
「……まき、見てたの?」
どうせ気付いていただろうに、天澄は振り返る。……ほら、コイツ全く傷付いた様子がない。にっこり笑って戯けて見せる、その余裕そうな顔をブン殴りたくなる。
「違う。見たくもないものを見せられた感じ」
交通事故に遭ったようなものだと思ってる。もやもやした気持ちから気を逸らすように、つん、と顔を天澄から逸らした。
「じゃあ、一緒に帰ってくれる?」
女の子にフラれたその身で女子と一緒に帰ろうとか抜かすコイツはやっぱり頭がおかしい。
「なんでアンタなんかと」
今日はどこかに寄る用事なんてないから、アタシは真っ直ぐ家に帰る。アンタが楽しむような要素はどこにもないはずだ。
「アタシは一人で帰るよ。……アンタと道が一緒だから、多少は被るとは思うけど」
なぜだか緩んでしまいそうになる顔をしかめて、アタシはそうとだけ答えた。


