アイツがアタシを落とそうとしてることは嫌でも理解出来た。登校中に偶然会ってしまったり、ものを渡すときに手が触れ合ってしまうとか、話しかけてくるだとか。
なるほど。アンタはこうやって他の人達を落としてきたのか。そう考えると、イライラが止まらない。
あれから、『デートの誘い』だとか言って一緒に下校とか寄り道をすることも増えてきた。基本は一緒に帰るだけで、どこかに寄り道する時は、アタシの買い物の用事に勝手に付いてくるだけなんだけど。曰く、
「せっかく帰り道が一緒なのに、一緒に帰らないとか勿体ないでしょ?」
とのこと。知るか!そんなもん。あいにく、頼りになりそうな友達は帰り道が違ったり、部活に入って時間が合わなかったりするから、全くあてにならない。
アイツはそんなことも見通していたように思える。……ムカつく。
一緒に(と言っても天澄が勝手についてきてるだけだけど)帰る時も、以前送ってもらった時みたいに、家の結構前で別れた。
「もう少し信用してよ」
とか言っていたけれど、出来るわけがない。
天澄がアタシに付いて帰らない日は、大抵誰かに告白されていたり、誰かとデートしたりしている時だ。
アタシに色々してくるけれど、アイツは相変わらず他の人達に手を出してる。だから、信用なんてできるわけもない。
それに、素直にアイツのいうことを聞くとか、なんだか負けたような気がしてすごく嫌だった。
「無理」
とだけ答えると、天澄は困ったように笑う。
アタシが帰りに夕飯の買い物をすると、天澄はそれに勝手に付いてくる。文化祭準備での買い出しの時みたいに、カートを押して買う物をカゴに入れていくアタシの後をただ付いてくるだけ。こいつなんでここまで付いてくるんだ、とか思っていたら、
「重いだろうから持つよ」
なんて言って、買い物袋を勝手に持つ。アタシ一人で十分に持てるんだけどなぜか、少しだけ嬉しく思う自分が居た。もちろん、家に着く前に強奪したけれど。
ある日、いつものように天澄がアタシの買い物袋を持って、スーパーから家に向かっている時に、
「夫婦みたいだね」
なんて言ってきた。
「バッカじゃないの?!」
アンタみたいなやつと夫婦……なんて、冗談じゃ、ない。なんだか想像して、恥ずかしくなって集まる熱を、怒って誤魔化した。


