大和さんに隠す訳にはいかない。ちゃんと、言わないといけない。

わかっているけれど、なかなか言い出せない。

意味もなく、足をぶらぶらさせて見る。

こんなの母上に見られたら、はしたないと言われそうだ。



チュンチュン、と小鳥のさえずりが聴こえる。


見上げると、神社にある大きな桜の樹に小鳥が留まっていた。

まだ、咲いていない蕾だらけの桜の樹。



「あの小鳥は私です。」

それで、あの桜の樹が大和さんですねと言葉を続けた。

大和さんは何も言わずに団子をもう一口。


「私は、あの樹から飛び立たないといけません。」


バサッ───


大きな風が吹いて、驚いた小鳥が飛び立っていく。


頬に涙が伝っていくのを感じた。桜の樹がぼんやりとしてよく見えなくなる。


私は、着物の袖に口元を押し付けて嗚咽をあげた。

「ちゃんと、言葉にして教えてくれませんか。」

そんな中、大和さんの声はいつも通り冷静だった。
いや、そんなことない。少し緊張で上ずっている。

そっと、私の背中に大和さんの手が触れて。

「嫁ぎ先が、決まって。私は、嫁がないといけません。」


大和さんが持っていた団子が、地面に音をたてて落ちた。