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いつものようにして、私は神社の境内にぼんやりと座っていた。


こうして座っているのは神社に用事があるわけではなく、待っている人がいるから。


その人はもうすぐ来る、はずだけど。


思い出されるのは、昨日の父上の言葉。


『嫁ぎ先が見つかった。』

誇らしそうにそう告げる父上。嬉しそうに笑顔を浮かべる母上。喜びの声をあげる妹達。


いやだ。


なんて、言えるはずもなく。

「結婚…したくないなぁ。」


ボソッと、吐き出した本音。

自然と顔は暗くなる。


だって、私は。



神社に向かって足音が近づいてきた。


私は首を横に振って、顔に無理やり笑顔を浮かべた。

そして立ち上がってその人のところへ駆け出した。


「大和さん。」
「待たせてしまいましたか。すみません。」

「いえ、私も今来た所ですから。」


そう言って微笑む。


その人──浅葱色の袴は、黒髪に良く映えていて、整った顔をしていて。

ギュッと、自分の桜色の着物の袖を掴んだ。

私は、結婚したくない。

だって、私は。


大和さんが好きなのだ。