大通りは、結構たくさんの人で賑わっている。


「おしゃれなお店がたくさんあるなぁ。」


パン屋があったり、カフェがあったり。あと、温泉町らしい温泉たまごがつくるところもあった。

「あっ、見て見てー。桜咲いてる。」
「綺麗だね。写真撮ろ。」

そんな若い女性たちの声に目をやると、ボリューム良く可愛らしく並んだ桜並木があった。


「さ、く、ら。」


ギュッと胸が不意に締め付けられる。

また、だ。


『桜、綺麗ですね。』
『これが、二人で見る最後の桜ですね。』


パッと、浮かんですぐに消える「何か」


「なんなんだろ。」


最近、よく見える「何か」は。私にも何なのかわからなくて。
たまに、今みたいに胸もギュッと苦しくなる。


ハッ─

息を短く吐き出した。


ふぅ。

息を吸い込む。

「いつか、何なのか(・・・・)わかるかな。」



心なしか、いつもとは違う気もする。

いつもより、強い「何か」なのか。

わからないけど。