僕はその言葉で、生きようと思った。


「辛くて悲しいから死にたいじゃない。辛くて悲しいから、救われたいってそう思うべきだ、って。」

ハッと息を吐いて、僕は問いかけた。



「…君は、救われたい?」

目の前の少女の目から大粒の涙が落ちていく。



残念ながら僕は君を救えない。そんな大層な奴じゃない、けど。

「君と一緒に戦うことはできるよ。」
だから。

「この手を取ってほしい。」


そう言うと、僕は手を差し出した。そして、一歩。また一歩。君に近づいていく。

どうか、この手を取ってほしいと強く願った。


少女は、涙をこぼして呆然と立ち尽くしていた。


けれど不意にその涙を拭った。



「…ありがとう。」
そう、たった一言呟くと。
 

ゆっくり手をのばして、僕の手に触れた。

じわじわとお互いの体温が広がっていく。


彼女の手は温かくて、僕は心から感じた。これが、「生きている」ということなんだと。

どちらかともなく、触れ合った手がゆっくりと絡み合った。でも、お互いそのことに何か言うことはなかった。



「…私ね、つらいの。救われたいの。」

「じゃあ、救われよう。僕が味方になるから。」

「本当に救われることができるの?」

「もし生きる意味が見つからなかったら、また一緒に探そう。」

僕は傍にいるから。


少女は頷いて、顔をあげた。その顔は何だか清々しい感じがした。



「私、死なない。」