彼女の過去は思っていたよりもずっとずっと重かった。



僕を救ってくれた君はこんなんじゃなかったのに、彼女に死んでほしくないのに、僕には何にもできないのか?


「僕には、できない。君を止められる説得はできない。」

僕は、そんな素晴らしい人間じゃない。


「そんなの、私は望んでない!」

彼女は、悲鳴のように叫んだ。


「でも、僕は君にどうしても死んでほしくない。君に生きてほしい。心から、絶対に!君に死んでほしくないんだ。」


「…どうして、そんなに私に生きてって言うの?」

彼女は、今日初めて会ったのに。と言葉を続けた。


「君が大切なんだ。僕にとって大切な人なんだ。」

僕を救ってくれた君と、生きたいと思ったから。

目の前で飛び降りた君が忘れられないから。


「…意味が分からない。」
「そうだね。意味が分からないと思う。」


君が僕を救ってくれたのは、目の前の君には身に覚えのないことだから。




「誰も君の味方じゃないなら僕がたった一人の味方になるよ。」


少女の喉がグッと鳴った。


「みんなが死んでほしいって言ったとしても、僕は君に生きてほしいと言うよ。」



だから、だから。




「…ある人が言ってたんだ。」
君が。



―あのね、辛くて悲しいから死にたいじゃないの。辛くて悲しいから、救われたいってそう思うべきでしょ?