シンクロニシティ

ゆっくりと目を開ける。光が視界に差し込んでくる。



「…ここは。」

澄んだ青空が見えた。雲一つない快晴。


「いい自殺日和、か。」


寝そべっていた体を起こすと、そこはあの屋上だった。


まだ、彼女は来てない。

「ここに先にいない方がいいな。」

ここに僕がいたら、きっと彼女は自殺しようとすることができないから。

でも、それじゃあ意味がない。
前回と同じことになってしまうだろう。


目の前で宙へと倒れていく姿―思い出したくないとギュッと目をつぶって考えないようにした。



そんなこと、もう起こさせないのだから。


僕は彼女がまだ来ていないことを確認すると、屋上を去って誰もいない階下に身をひそめた。



しばらくすると、階段を誰かが上る音が聞こえてきた。

来た。


本当は君が自殺したいと思っていないのが一番いいことだけど、ここに来たということはそういうことなのだろう。


「君は、どうして死にたいんだろう。」
小さな声で呟いた。


僕は、お母さんから逃げたかった。どうしようもなくて自殺することしか術がないと思った。


救われたかった。


「君は、救われたくなかった?」


君は僕に言った。死にたいじゃなくて救われたいと思うべきだと。

救われたいと思うこととだから死のうと思うことは違うのだと。


じゃあ、なんで君はあのとき死んだんだ。


死にたいじゃなくて救われたいんだと思うべきだってわかっていた君が、どうして死んだのだろう。


「…行こう。」
その答えを知りに。