シンクロニシティ

悪いことをしたらお母さんに殴られる。悪いことをしなくたってお母さんに殴られる。誰も助けてくれない。
毎日、毎日、毎日、毎日。

「あんたに生きる価値なんてないんだから!」
「何であんたが生まれてきたの?何で…」


何度、そんなことを言われただろう。
もう、何も…考えたくない。


「……死にたい。」

もう、限界だった。いや、きっともっと前から限界だった。
もう、死んでしまいたいと。思うしかなかった。




「だから今日、僕はこの屋上で死のうと思った。」

「そっか。」


少女は微笑を浮かべると俯いた。

「これから、どうするの?」
家に帰る?と少女は尋ねた。

「帰るつもり。」


家に帰る。帰って、お父さんとお母さんにお別れの挨拶をする。

果たして聞いてくれるかはわからないけど。その後で。

「もう、僕はあの家にはいられないから。救われるために、家を出るよ。」

あてもない、お金だってたくさん持ってない、現実的じゃないけど。


「死んでまで失いたかったものを、また得たいとは思わないから。」


「…なんか君、一つ大きくなったね。」

さっきまでとは何かが違うね。と少女は眩しそうに見つめた。


「ありがとう。本当に。君がもしここにいなかったら、僕は生きようとしてなかった。」
「お礼なんて、いらない!」

少女はニッと笑った。


「君が、これから生きていってくれることが私にとって一番のお礼だよ。」


僕は、改めて目の前の少女の凄さを思い知らされた。