不意に、大きな風が吹いて。

「あっ──」



手のひらの桜の花びらは、華麗に舞っていく。

遠くへ遠くへと───



後ろを振り向くと、一人の青年が笑顔で立っていた。
端正な顔立ち、透き通った瞳はどこか…似ているような。

「いないと、思いました?」


青年はいたずらそうに笑った。



涙が込み上げてくるのを感じる。

雫が頬を流れていく。

「…大和…さん?」


その青年は私の問いに大きく頷いた。


それが限界だった。
もう、何も考えられずに私は嗚咽して泣いた。


青年(大和さん)が近づいてきて、ギュッと私のことを抱き締めた。

ギュッと、私も大和さんのデニムのジャケットを掴む。


「悲しい?」
「違う…嬉しくて。」


嬉しくて、幸せで、涙が止まらなかった。




「あのときは、小梅さんと一緒にいるっている願いは叶わなかった。でも。」

私が嗚咽してからしばらく経った頃、大和さんは不意にそう呟いた。


そうして、私に向かって手のひらを差し出した。

「今度は、一緒にいてくれますか?」



私は、一度手のひらをじっと見つめて笑顔を浮かべた。

「はい!」


ギュッと、手と手が繋がって。


『けれど、またいつか巡り会えたなら。その時は。』


あなたの願い、叶ったよ。

私はそっと少女へと呟く。




樹に咲き誇る桜の花たちは、まだまだ無くなりそうもなかった。

                  fin