「全て、思い出しましたか?」


背後から凛とした声が聞こえる。


タッ─


私は、駆け上がっていた足を止めて振り向いた。


「…あなたは。」


そこには、あの少女。私の前世の少女が笑顔で立っていた。


「全部、思い出しました。大和さんのことも。」

私がそう告げると少女は嬉しそうな顔をした。


「私は、大和さんと結ばれることができなかった。でも。今、願いが叶って─とても幸せ。」


少女はえへへと微笑む。


あなたと会えてよかった、と少女は告げた。

「私が嫁いだ先の旦那様もすごく優しくて、最後まで幸せでした。でも、やっぱり大和さんのことは忘れられなかった。」


それでもその口調は優しくて、少女がどれほど嫁いだ先の旦那様を慕っているかが伝わってきた。

「だから、それはあなたにお願いしても─いいですか?」


でも、と思わず声が出た。

「私は、大和さんがどこにいるのか知らない。だからっ」
「会えますよ。」


その言葉に私は目を丸くした。

「あなたが持っているその花びら。」

手のひらを広げると、さっきの桜の花びらが一枚。


「好き」と書いてある花びら。