ジャリッ

大和さんが一歩踏み出すと、神社に敷いてある砂利が音をたてた。


「小梅さん、ご結婚おめでとうございます。」


最後に、大和さんはそう告げて歩き出した。

大和さんはお人好しだ。
こんなときでも、祝いの言葉と礼儀を忘れない。

こんなとき、だからかもしれない。

私はそんな大和さんだから、好きなんだ。
そんな大和さんが好き。


頬を伝う涙の量が増えていく。


どんどん離れていく大好きな人の背中。

思わず。

「大和さんっ───!」


──いかないで。


思わず言おうとしたその五文字は、口を強く結んでとどめた。

だめ、それを言ってしまったら。
せっかくの大和さんの思いが、意味がなくなってしまうから。


「私…私は、ずっとあなただけが好きでしたよ。大好きでした。」


ぼそりと、呟く。今さら、声に出しても遅いけれど。

本当は伝えたかった、大和さんに。

「……なんてもう遅いですけど。」

そう言って(わら)う。