あのですね。と大和さんはため息をついた。


「小梅さんが思っているよりずっとずっと、悲しいですよ。けど。」


大和さんはそっと目尻を下げた。

「最後だからこそ、いつも通りでいたいんです。」


その言葉がきっかけとなって、私の目には涙が溜まった。

泣いたらだめだ。せっかく大和さんがいつも通りでいようとしてくれているのに。


けれど。

「…私も、すごくすごく…悲しいですよ?」


ポロポロと、涙がゆっくりと落ちていく。


大和さんはそんな私を見て微笑むと、そっと私を抱き締めた。


「僕は、ずっと小梅さんのこと。好きでしたよ。」


え?と顔をあげようとすると大和さんに制された。

「そろそろ、お別れですね。」

空はほんのりと朱く、もういい時間だ。



本当は、言いたかった。

私も大和さんが好きだと。

「…っ。」

けれど、次々とこぼれる涙で声を出せなかった。


──

「これで、お別れ…ですね。」
「そうですね。」

桜の樹の前で、私と大和さんは向かい合って立っていた。


それじゃあ。と大和さんが丁寧にお辞儀をした。

あぁ、もうさようならなんだと思わされる。