──sideB


この前まで蕾がたくさん付いていた桜の樹には、満開の花々が咲き誇っている。


「きれい…。」

思わずといったように漏らすと、隣にいる大和さんもそうですねと呟いた。

「これが、二人で見る最後の桜ですね。」
「…はい。」


私は、そう返事をするとうつむいた。



明日。私が嫁ぐ日。


だから今日が大和さんと会える最後の日だ。

チラッと横目で大和さんの横顔を盗み見た。

けれども、大和さんはいつも通り。

私は、心の中が不安と悲しさでいっぱいだというのに。


「大和さんは、悲しくないんですか?今日は二人で会える最後の日なのに。」


言ってから赤面した。

これじゃあ、私が大和さんに悲しいと思ってほしいみたいだ。


「悲しいに決まってますよ。」
「へ?」

大和さんは、怒ったような泣きそうな顔をした。
初めて、大和さんのそんな顔を見た。


「本当は嫁になんかいかせたくないし、無理矢理にでも連れ去りたい。」

嫌われたくないからそんなことしませんけど、と付け足した。