私は、あの少女を知っている。

大和さんと呼ばれるあの青年を知っている。

あの神社を、あの桜の樹を、知っている。


「行かなきゃ。」


なぜかわからない、わからないけれど、そう思った。

行かなきゃ、後悔すると思った。



『小梅さん。』


私の名前を呼ぶ声が、聴こえた。


『大和さん。』


そして少女が、笑顔で青年の名前を呼ぶのが見えた。



「…あ。」



どうして、私はあの少女を知っていたのか。どうして、こんなに胸が苦しいのか。

どうして、勝手に涙が溢れるのか。


「はっ、はっ。─」

息を切らしながら、神社へと続く階段の前へとたどり着いた。

躊躇なく、私は階段を駆け上がっていく。


どうして、桜がこんなに出てくるのか。

どうして、桜の花びらに好きって。


どうして──



ポンッ

と弾けた音が聴こえたような。

そうか、そういうことなんだ。


こんなにも、懐かしいのは。


「私、私が…」

あの少女だから。