何か、大切なことを思い出しそうな気がする。


「この、桜の花びらのせい?」



そっと、花びらを掴んで裏返して──息を飲んだ。


だって、そこには。


「好き」

と、その二文字が小さく書かれていたから。

「何で…。」

私、知らない。わからないのに。
どうしてこんなに懐かしいんだろう。


『大和さん!』

パッと浮かんで消える。

可憐な少女の声が聴こえた。

うっすらとあの少女と一緒にいた青年が見える。


ギュッと胸が苦しくなる。

「大和…さん?」

どこかで少女と大和さんという青年が座っている。


浮かんだ中に見えたのは──

「神社…?」

私はパッと辺りを見回した。


辺りに神社は見当たらない。けれど、周辺の建物の少し向こう。

ちょっと高台になったところに赤い鳥居が見える。


「あそこの神社…。」


そう言うや否や、私は神社へと駆け出していた。