また、見えた。



今度はさっき見えた少女と、その横には青年がいる。


桜色の着物。

長い黒髪は、赤い紐で結ってあって、丸っこい瞳は少女が笑顔を浮かべる度に細められた。


とても愛らしく、可愛らしい少女。



私が、知っていて知らない少女。


「…あなたは一体誰なの?」

(小梅?ねぇ、小梅?) 


友人の訝しげな声で、私はハッとして電話へと意識を向ける。

「…ごめん、気にしないで。」

団子ね、はいはい。買ってくるよ。と明るい声色でごまかす。


(小梅、どうしたの?何かあった?)

けれど、付き合いの長い友人にはごまかせなかったみたいだ。

「何にもないよ、大丈夫。」

そう、告げると私は返事を聞かずに電話を切った。


「団子、買いに行かなきゃ。」


いつまでも、こんなことで立ち止まっているわけにはいかない。


そうだよ、ここには一人旅に来たんだから。

「この事は、一回忘れよう。」



一人旅を満喫しなくちゃ。