小山田君は、炎の中で狼狽する大江を見る。

「ついにこの時がきた」

その言葉に、憎悪も怒気もなかった。

あれほど機関を壊滅させる事を望み、復讐の念に駆られていた小山田君が、意外なほど冷静に大江を見据えていた。

「なぜ理解できんのだこの馬鹿者が!」

髪を振り乱し、額に汗を浮かべ。

大江は怒鳴り散らす。

「覚醒者計画さえ軌道に乗れば、この国は世界を牛耳る事ができるのだ!どんな兵器を保有する国々よりも!たとえ超大国さえも!世界が全て我々の国にひれ伏すのだぞ!?」

「大層な事ほざいちゃいるが…要は世界征服だろう?」

さめた口調で。

小山田君の右手がユラリと動いた。

その掌に、赤よりも高熱の白い炎が発生する。

「流行らないんだ…今時そういうのは」

そして。








恐らくは『熱い』と感じる間もなく。

大江は白い炎によって消し飛ばされた。

同時に広がる熱波。

室内は地獄の業火に包まれ、最早生物の存在できる世界ではなくなる。

私やななみちゃんですら、もう生存限界を超えるほどの空間。

そんな中で唯一人、小山田君だけが平然と立ち尽くす。





「さぁ…脱出しよう…もうここには用がない」