機関の施設にいた頃は過酷な実験ばかりで心休まる事がなかった彼女。

しかし私達と知り合い、ななみちゃんは比較的歳の近い小山田君と知り合った。

同じ覚醒者同士。

廃棄場では覚醒者1号から何度も危機を救ってもらった。

小山田君に好意を持つのは当然の流れといえる。

「今度、小山田君に話しかけてごらん?『怪我とかしてたら治してあげるー』って」

「……いい」

ななみちゃんはまたフルフルと首を振った。

どことなく、頬が赤くなっているような気がする。

…彼女の覚醒者としての能力は『ヒーリング』。

正常な細胞にその力を注ぎ込む事で壊疽を引き起こす事もできるが、本来は怪我を治癒する為の能力だ。

戦闘専門の小山田君は負傷する事も多く、ななみちゃんは接する機会も多い筈なのだけれど…。

「……」

彼女は無言のまま、遠巻きから小山田君の姿を見ている。

この調子じゃあ、親しくなるのには当分時間がかかりそうだ。

ま、一緒にいるんだからチャンスは幾らでもある。

長い目で見守ってあげるとしよう。