誰も動けなかった。

量産型も、矢崎も、哲平さんも、私も。

みんな、天井へと飛翔する火球を見ている。

そしてその火球が天井に命中する瞬間。

「!!」

私は黛さんと共にその場から消失した。

瞬間移動。

火球を受けて崩落する地下通路の区画から、私と黛さんは脱出に成功した。

そう、私と黛さんだけ。

…量産型も、矢崎も、あの区画の凄まじいまでの崩落に巻き込まれたのだ。

身の丈よりも大きなコンクリート片や、鉄筋が崩れ落ちる空間。

あんなものをまともに受けたら、たとえ常人よりも優れた肉体を持つ覚醒者でさえも生きてはいられないだろう。





そう、哲平さんでさえも…。