私と黛さんは見ていた。

哲平さんが回避した筈の10本のナイフ。

そのうちの1本が、空中で突然静止。

向きを変え、哲平さんの背中目掛けて飛んでいき、彼に突き刺さったのだ。

…空中を飛翔するナイフが、途中で止まって向きを変え、再度襲い掛かる。

不自然極まりない動き。

だけど、そんな不自然な動きを可能にする者を、私達は一人知っている。

「覚醒者…1号」

哲平さんが呟く。

そう。

機関による初の実用化に成功した、戦闘特化型覚醒者、1号。

彼女の持っていたテレキネシス…念動力ならば、そういう有り得ない動きも可能だった。

しかし。

「…1号は…廃棄場で…死んだ筈」

私は呟いた。

確かに見た。

死闘の末、哲平さんの炎によって敗北を喫した1号の姿を、私は確かに見たのだ。