近づいてくる島影が次第に見えなくなる中、エンジンの音が大きくなり船内アナウンスが流れてきた。


  大きな金属音がしたかと思うと
 タラップがゆっくりと下がり始めた。



   ーーどうしよう…
   ーーお母さんに何て言おう…



  考えるだけで呼吸が速くなる。
    世界が回り出す。



  フェリーに残ったのはアタシ一人になり
「すみません、お客様で最後なのですが」
   と船の車掌(しゃしょう)らしき男の人が
  迷惑そうな顔で近くに来て、
   ()かしてくるから仕方なく降りた。



 港に降り立つと、すぐそばにあった木箱に腰を下ろして空を見上げると、満月で星が(きら)めいていて、その無数の星たちの間に准が見えた気がした。



      東京じゃ…
    こんなにいっぱいの星なんて
    見たこともなかった。