––––11年前…


「順平ちゃん…その話…ホンマなんか?」

「ああ…間違いない!おらあ…確かにこの目で見たんじゃ!」


目をぎらつかせて話す未来の父、順平。准の父親と未来の父親も島の同級生だった。


「カジキの群れが50km沖合の、あの『人喰い渦』のそばにおったけん!間違いねえ!ありゃ絶対カジキの群れやった」


「おらあ興奮した。手が震えて仕方なかった。じゃけん、こんこと…高ちゃんに言わにゃあ思おて急いで戻ってきたんじゃ!これで准坊、病院でちゃんと見てもらえるで!」


この島のほとんどの家は漁師で、
   漁で生計をたてていた。


 その日は、前の日から300年に一度あるかないかという潮の流れが急変してできる大きな潮目(しおめ)に…本来いるはずのない魚が迷い込んできていた。


 順平の話では一匹250万円はくだらないカジキの群れがいくつも来ていたということで、そのことに色めきだった。