准と話し始めてもう2時間。夕方は東の空にあったはずの三日月が南の空高く、ふたりの顔を照らす。



 満ちてきた潮が准の足元を濡らしそうに騒めく。でもその潮も朝になればひいて、すぐすばの『恋岩』まで細い道が現れ、歩いて渡れるようになる。


 その『恋岩』の前に立って昔、2人で行った中学の頃のことを思い出していると、いきなり准に後ろから抱きしめられ身体がピクッとなる。


          えっ…
      ときめく心が騒ぎ出す。


「准…」
アタシの胸の前で組んだ准の両手にアタシの手を添えると温かくて、高まる想い。

「嫌か?」
「ううん。」

「会いたかったよ…」
「アタシもだよ…」

「准が出て行った日…間に合わなかったけど…」

「知ってる。ずっと見てたから…」
「あの日…自分の気持ち伝えに行ったんだよ。」
「俺も…これ…未来にあげたくて」


そう言ってジーパンのポケットから取り出した指輪。



星がいっぱいついたシルバーの指輪。

 後ろから抱かれたままアタシの手を取って右手の手のひらに乗せられたシルバーの指輪が月明かりに照らされて、本物の星みたいに(きら)めいた。