煙が消えた時、アーサーの姿はもうどこにもなかった。桜木刑事が「全国手配しなくては……」と電話を始め、圭介たちが立ち尽くす蘭に「大丈夫?」と駆け寄る。

「……私は大丈夫です。それより、支度をしなければいけません」

蘭はそう言い、歩き出す。圭介が「何の支度ですか?」と訊ね、蘭は迷うことなく「アメリカへ行く支度です」と答えた。

『星夜を助けたかったらアメリカに来い。そこで殺してやる』

アーサーはそう言ったのだ。アメリカで星夜は生きている。それが蘭の胸に大きな希望を与えた。

「星夜さんを助けなければ……」

蘭はエメラルドのブローチを握り締める。そして、世界法医学研究所へと足を早めた。