トメの解剖から数日経った。蘭は他の解剖を行いながら、トメの事件の捜査状況の進展具合を気にしていた。

「病院に話を聞きに行ったんだが、誰も事件に関することは教えてくれなくてね……。ただ、トメさんの主治医だった玉井論(たまいろん)のことについて教えてもらったよ」

世界法医学研究所に来た際、桜木刑事は主治医だった人物のことを蘭たちに教えてくれた。

論は病院の跡取りで、一人っ子のため大切に育てられたらしい。外科医で多くの患者の担当医をしているらしいのだが、看護師たちは患者からの評価などは教えてくれなかったそうだ。

「それって絶対怪しいじゃん!」

アーサーが言い、蘭は「ゼルダに訊いてみます」と電話を手にする。そしてすぐにかけ始めた。

ゼルダはトメが突然亡くなったことや、世界法医学研究所で解剖することになったこと、トメの血液から塩化カリウムが検出されたことに圭介たちのように戸惑っていた。

「検査に行ったっきり帰ってこなくて……。検査室で容体が急変したって聞いたんだけど、あんなに元気だったからおかしいなって思って……」