世界法医学研究所の監察医、神楽蘭(かぐららん)は仕事が終わった後、ある場所へと立ち寄ることになった。そのある場所とは総合病院だ。

「ここですね……」

「ええ。ここにゼルダさんがいるそうです」

蘭の隣で世界法医学研究所に研修に来ている探偵の深森圭介(ふかもりけいすけ)が言う。二人はドイツ人監察医のゼルダ・ゾルヴィッグのお見舞いに来たのだ。

朝、世界法医学研究所の所長である紺野碧子(こんのあおこ)にゼルダから電話がかかってきたのだ。腹痛で病院に搬送され、急性虫垂炎で入院しなければならなくなったというものだった。

「急性虫垂炎かぁ……。まあゼルダさんは薬で治せるって言ってましたしホッとしました」

圭介が笑い、蘭も「ゼルダが無事でよかったです」と返す。蘭は、ゼルダとどういう関係なのかわからない。ゼルダは「親友!」と話していたが、蘭はゼルダに何も自分のことを話していない。こんな関係が友達や親友と呼べるのかわからないのだ。