「ひぇっ……、なんですか急に!」
「んー、だってキミが上の空だから」
相変わらず笑顔で、ソファについていたわたしの手をギュッと握ってきた。
こ、この先輩……笑顔でとても優しそうだけど、なんとなく危なそうな気がする。
「今は僕と一緒にいるんだから、僕のこと考えて興味持ってほしいなってね」
「わ、わかりました」
なんだか、笑顔の奥で黒いものが見えたような気がしてね、言うこと聞いたほうがいいかなって。
「じゃあ、あらためて。僕は久城月希」
「ひさき、つき……先輩」
名前までとてつもない王子様感。
「で、キミの名前は?」
「綾瀬、陽依です」
「へぇ、名前まで可愛いんだね。漢字はどう書くの?」
「太陽の"陽"に、にんべんにころものやつ、です」
「それで陽依って読むんだ?」
「そ、そうです」
「じゃあ、僕と陽依ちゃんは、月と太陽かな?」
「へっ?」

