「もうそこから全員で必死に陽依のことを探してね。救助隊の人にも協力してもらって、なんとか陽依を見つけることができたの」
見つかった当時、わたしは頭をかなり強くぶつけていたらしく、命に別状はなかったけれど数日間ずっと病院で眠り続けていたらしい。
「お医者さんからはね、おそらく頭を強くぶつけたショックでその部分の記憶だけが残ってないって言われて。だから目覚めた時の陽依は何も覚えてなかったの」
「……」
まさか、そんなことがあったなんて。
「きっと今この話をしてもピンとこないわよね」
「うん……」
「その当時はね、みんな陽依が無事でよかったって安堵してたんだけど。お父さんだけがカンカンに怒っちゃってね」
「お、怒ったってまさか……」
「そう。陽依を勝手に連れ出したって、瑞月くんに対して大人気ない叱り方をしちゃってね」
そんな。
元をたどれば拗ねたわたしが悪くて、優しい瑞月くんはわたしのしたいことを叶えようとしてくれただけなのに。

