へなへなと完全に力が抜けきって、とても立ってられる状態じゃない。
「それだけ怖い思いしたってことだね。ごめんね、僕がもう少し早く助けられたらよかったね」
「っ、」
そんなことないって意味を込めて、首をフルフル横に振る。
ほんとは助けてくれてありがとうございましたって伝えなきゃいけないのに。
「陽依ちゃんが落ち着くまで待ってあげたいけど、ここにいるのはあんまりよくないから」
急に背中を向けられて、「はい、僕の背中に乗ってね」そんなこと言われてしまって。
おとなしく大きな背中にぜんぶをあずけると、軽々しくひょいっとおんぶして歩き出した。
ほんとは月希先輩のことつかみにくい人で、苦手とか思ってたけど。
こうして助けてくれて、おまけにこんなふうに優しくしてくれて。
先輩にたいする見方がちょっとだけ変わったかもしれない……なんて。

