電話を当てている逆の耳で水瀬君が囁く。


「ひゃっ」


『えっ、真奈?』


「なんでもないの、水瀬君が……」


『隣に水瀬がいるの?あんたたち、いつから同棲始めたのよ』


「はっ、はじめてないよ」


紗里奈は、私と水瀬君の距離感を見てよくからかってくる。


私の気持ち、知ってて言ってるし。


「あ、山城?その海、俺と斗真も一緒に行く」


『あら、いいの?斗真、確か泳げなかったはずだけど』


如月君、泳げないんだ。


「ああ。山城が誘えば来るだろ。じゃあな」


返事を聞かずに切った水瀬君は、私の方に向き直った。


「お前、海とかバカじゃねーの」


「え、なんでよ」


「ちょっと前のこと忘れたか?襲われかけたんだぞお前。なのに水着着て海とか、何かあったらどうすんだよ」