とりあえず着替えは予備を使うことにした。


「あっ、バイト!」


バイトがあることを思い出して私は急いで着替えてバイト先のパン屋さんへと向かった。


「お疲れ様でーす」


着替えて厨房へ入ると湊さんが忙しそうに動き回ってた。


「あっ、真奈ちゃん、ごめん手が離せない」


いつもなら挨拶で返してくれる湊さんが申し訳なさそうに言った。


呼んでいる人のところへ行くと理由は、すぐにわかった。


あのお客さんだ。


あの人、私の手を握ってきた人。


最近の話じゃ、私のシフトをつきとめたのかその日に来るらしい。


この様子じゃ、時間も覚えてそう。


「ご注文は、何になさいますか?」


平然とそう言った。


言うしかなかった。