紗里奈の手には、私のカバン。


如月君の手には、水瀬君のカバンが握られていた。


「ありがと、みんな」


私たちは、歩き出した。


いや、私は抱えられてて全然歩いてないんだけど。


たわいのないおしゃべりをしながら歩く道は、私のさっきまでの出来事を忘れさせてくれるくらい楽しいものだった。


「なあ、真奈、今日、泊まってかね?」


「えっ?」


夜ご飯を作るために家には帰らず、水瀬君の家へ入るとそう言われた。


「そんな立ってるのがやっとな奴に家帰れなんて言えねーよ。なあ、服は貸すし、明日は休みだし、バイトもねーんだろ?」


水瀬君の瞳には、有無を言わせない圧力があった。


「うん」


そう言うと、水瀬君は満足そうに頷いて私をソファの上に下ろした。