抱きしめ返すことはしずに、私の腕はだらんと降ろされている。


ドキドキしない、水瀬君に抱きしめられた時みたいに胸がきゅうってならない。


でも、湊さんの必死さが伝わってくるから、無理やり突き放すこともできない。


「真奈……?」


どうやってこの状況を変えようか悩んでいると、名前を呼ばれた。


聞き間違えるはずのない、水瀬君の声。


「行くぞ」


低く、唸るようにそう言って湊さんから引き離される。


掴まれた腕が痛い。


「返事は、次会った時に聞くから」


そう言われたけど、頷くことしかできなかった。


掴まれた腕が痛い。


何も離さずに家まで歩くと、水瀬君の家に入れられる。


靴を脱いだのを確認すると水瀬君は、引っ張るように私をリビングへと向かう。