「あ、はは。素直、さては照れてるな?」



とお父さんがセンスの見あたらない返しで、この変な空気感を和ませようとしているのか……なんなのか。


そしてあたしは、麻子さんの愛する息子に対して、なんて暴言を吐いたんだろうと反省した。


だから、麻子さんに向けて、慌てて返したんだ。


「ててていうか、あたしにとっての理太は、癒し系っていうか、可愛いみたいな感じなの!」



理太は意地悪だけどベースは穏やかだし、可愛いなと思う瞬間は、山ほどある。


だから嘘は決してついていない。



「へー、そっかー。可愛いだって、理太。よかったわねぇ~」



和やかな空気だ。


なのに。


――カラーン。


「あ。落としちゃった」


理太の手からフォークが落ちて、拾おうと体をあたしの方へ倒した理太は。


その計算し尽くされたタイミングであたしの耳もとに


あたし以外の誰にも気づかれることなく、低く声を落とした。



「……可愛いって言っちゃったこと、あとで後悔させてあげるね?」



――鋭い目つき、にやりと綺麗に弧を描く唇。



ゾクゾクゾクッと背筋が伸びあがった。


何、まさかあたし、理太の地雷を踏んだんじゃなかろうか。