「わっ……びっくりしたぁ。ノックくらいして」


「そんなこと言ってる場合じゃないよ! この音何!?」


「カツコツ言ってたやつ? 素直がなんかしてたんじゃないの?」



「あたしは違う、ネイルしてたもん! 理太でしょ!?」



「俺は見ての通り漫画読んでるよ」


「う、ほんとだ……」



理太のそばには漫画以外なにもない。


じゃあ……あの音はどこから?



外って感じじゃなかった。ゼッタイ家の中から鳴ってた……。




「お父さんたちの寝室はかなり離れてるし、もっと全然近くから鳴ってたよね……?」



「もういいじゃん。気にしないで寝なよ」



「だって! お、お化けだったら……」



「お化けかぁ……。この家って一軒家だけど賃貸だもんな。どんな歴史が刻まれてるかわかんないし、いてもおかしくないかもね」



「……な、なんで理太はそんな怖いことを平然と言うの」



「俺、別に怖くないもん。おやすみ」



この会話中、漫画から一切目をそらさず、ひらひらと手を振って出ていけと言わんばかりの理太だけど……。