「……あ」


電気の消えた教室にはひとつの人かげがあった。


男子生徒が後ろから順番に窓を閉めている。



理太、まだいたんだ……。


「…窓締めてくれてたの?」


「あ。戻ってきたんだ。素直って忘れっぽいよね」



ふっと笑う理太を見たら、ゴメンって言葉しか出てこない。



「ごめんね、ノートの件は、本当にパシってごめん!」



「いいよ。二人で行きたがった俺が悪いんだしね」



う……。
悲しそうな顔、見せないで……なけなしの良心が痛むでしょう……。



思わず胸を抑えたら、すっと温度の低い視線があたしを捉えて、



「……早くバイト行きなよ」



そう促す理太を見て、再度思う。



……まだまだすねてる!



「……はい、よろこんで。行ってきます」



と、バイトに行ったあたしは。


キッチンとホールを両方掛け持つ時給900円の真面目な働きアリとなり。


家につくなり力尽きた。



――ばた。




リビングに入ってすぐの床に倒れ込むと、冷たい床が気持ちよくて……。



眠い超えて、眠い……。