「それでも寂しいなら。素直の寂しさ、俺が埋めてあげる」


おでこにかかる髪を理太の手がそっと払う。



――ちゅ、とおでこにキスをされた瞬間、眠りかけていた目が覚めた。



甘い……この天然たらしは甘すぎる。


感じたことのない感触が、額に残ってしまった……。



「ふぅー……っ」



細く吐いた息が震えてしまう。それくらいドキドキさせられてる。



バカかあたしは、これじゃ遊び人理太の思うつぼなのに。



「素直のほっぺ、真っ赤じゃん」




両頬を包むてのひらがまだ少し冷えて感じるのは、あたしの頬が熱いから……なんだよね?



とたんに恥ずかしくなって、理太の胸に顔をひっつけて隠した。




「りっ、理太はどうなの? もしかして麻子さん取られて、寂しい?」


「んー、そうかもね……。彼氏がいることも知らなかったし、本当に根耳に水だったな……」


寂しそうな声色。


思わず顔をあげると、理太の表情は陰っていて、ずきりと胸がうずいてしまう。



「突然、お母さんをもらってもいいかな?っておじさんが家に来た日、けっこう衝撃だったしね……」



……お父さんのせいで、理太……そんなに寂しい思いしてたんだ……。



もしかしたら、再婚したくなかったかな……?


ああもう、理太……あたしのお父さんがごめん……!



「じゃあ、あたしも、理太の寂しさ埋めてあげるから……!」



だから、そんな顔しないで……。



理太の胸に向かって叫んだら、「ふ」と一回理太の胸が呼吸した。



「……言ったね?」



その声に、今一度顔を上げれば、にやりと意地悪に笑っている。



そこでハッとした。


まさか、あたしはまた理太にはめられたんじゃなかろうか。