きみのこと、極甘にいじめたい。

「なんでって……理太が知らない女子にキスなんかするからでしょ?」


「うん。だから、なんで他の子とキスすると、素直が怒るの?」


そうやって、あたしの痛いところを突いた理太は、どこか嬉しそうに口角を上げてあたしを見下ろす。


「……ねー、それってヤキモチ?」


「ちが、そんなわけないから……!」


「じゃあ、もしヤキモチならの話だけど、俺がキスしたいって思う子は素直だけだよ」


この……理太は、また平然と殺し文句を……。


それが本音だとしたら、他の女としないで、最初からあたしとしなさいよ!!


……っ。はぁ?


ちょっと待って、あたしは、今……なんて……。


「……どーしたの、素直?」


目の前で理太のパーの手が上下して、ハッとした。




「ててて、ていうかあたし、妬いてないし……‼ わかなが、理太に好意あるのに、そういう子の前で他の子にキスするとか、あり得ないって思ったの!」


しぃんと静まり返る視聴覚室。

これ、なんの間?と思っていたら理太がようやく口を開いた。



「……あぁ、そっち? わかなの好意を思いやらない俺に怒ってるってこと?」


「そうだよ!」


「妬いたんじゃないんだ……」


「当たり前!!!」


「ねー、素直って、いま俺のこと振ってる自覚はあんの?」


「……え?」


寂しそうな視線があたしの火照った頬を一気に冷ましていく。


はぁ、と呆れかえるようなため息がそのあとに続いた。



「本当に友情第一なひとだね。第一っていうよりも、まるで友情以外は存在しないみたいな非情な扱い。普通にむかつくよ」



なんて顔をさせてしまったんだろう。


理太の本気で傷ついた顔を、あたしは初めて見たのかもしれない。



「友達第一でいいけど……俺のことないがしろにしないで」



ぎゅっとあたしを抱きしめる理太。



寂しそうな両手。罪悪感が破裂しそうなほど膨らんでいく。



「ごめん……ごめんね、理太」


「俺のこと、そんなにどうでもいいの」


「い、いや……」


「……知らない」


拗ねたような声が体ごしに伝わる。


そして、体が離れた瞬間、心まで突き放されたような感覚。


冷ややかな目。


それはいつもの理太が私に向ける目とはまるで違う。


「……大事にしてくれないなら、もう素直なんか知らない」