きみのこと、極甘にいじめたい。

……違う、のかな。


本当はあたし、理太のことなんかちゃんとわかってないもん。


あたしと理太が仲良かったのはたった一年間だ。


そのあとの理太は、あたしの知ってる以上の華々しいクズに成長していたのかもしれない。


……ああ、だからあんなに手慣れてあたしにキスマークつけてきたりしたのかな……?


考えたくなぁい……。
最低、最悪。理太なんか、だいきらい。



潰れるように自分の席に突っ伏した。



「ねー聞いた? 理太が昨日、」
「キスしたって話? 聞いた聞いた!」



クラスでもあちこちでコソコソと理太の話が聞こえてる。


キスする前に、理太、あたしに言ったよね。


『助けるつもりなんてなかったけど、素直が泣くなら仕方ないよね』って。


どういう意味?


まるで、あたしを助けたみたいに言うじゃん。


キスで助けるって何?
……もう、ほんとクズ……。バカ。



「なんかショックだなぁ……。ねー素直は知ってたの?」


自分の名前が聞こえたから顔をあげると、クラスの女子たちが数人であたしのもとへ来ていて。



「理太がそんな軽い人だとは思わなかったー。やけにとっつきやすいなーとは思ってたけどぉ」

「ね、なんか見る目変わる……」


と、口々に理太を悪く言い始めた。



キスしてもらえるかも、と喜ぶチャラ男容認タイプの女子がいたように、
チャラ男拒絶タイプの女子だっているに決まってる。



んん……なんでかなぁ。


みんなに好き勝手言われるのは、そういうことをした理太が悪いのに。


理太が悪く言われると、すっごくもやもやする。



「あたしもよくわかんないけど……チャラい人って、みんなに優しいってことなのかもよ?」


わかなに意地悪してきた女子に対して、幻滅して、強く突き放す男子だってこの世にはいるだろう。


でも、理太は静かに受け止めてしまった。


……優しすぎるから?


理太はさ、だれにでも、優しい。


ずっとそうだったもん。


「理太が底抜けにチャラいクズ男かどうかは、知らないけど……。優しい人だとあたしは……思うの。だから真実がどうかはわからないことだし、あまり言わないでおこうよ?」


真面目な口調が目立った。
しん、と周りが静まった気がして、「な、なんてね!」と笑ったとき、



いつの間にか登校していた理太の存在がそばにあることに気づいた。


どくりと心臓が跳ねあがる。


何を言うんだろう、と構えたら、理太は言った。


「……わかなは?」