「蒔織の別荘に招待してくれるの?!」
と、無邪気な笑顔で私に聞き返す天使は私の中学の頃からの親友のうい。
ういはK.C.っていう日本じゃ知らない人はいない大財閥の一人娘で令嬢。

「うん!もちろんだよ!」
私は笑顔でそう答える。
これから彼氏の優太くんを誘うんだけど、うい許してくれるかな…?

「うい?優太くんも誘っていい…?」
と私が聞くとふわっと笑うと
「いいよ。呼んできな?」

優太くんを呼んで優太くんとういと3人で別荘について話していると、優太くんが
「なあ蒔織、その別荘ってどこにあるんだ?」

ミステリー好きの優太くんとういにこの話はあんまりしたくなかったけど…
「霧崎山の奥にあるところ。」
というとやはり予想通りの反応で。2人とも目を輝かせて、しかも2人同時に。

「クローズド・サークル…!」

なんて言うものだから思わず笑ってしまう。

「ふふっ、とにかく夏休みの8/3〜8/6は開けといてよ!」と、2人に釘を刺しておいて待ち合わせ時間を伝える。 

今日は大学の休み前最後の授業だ。つまり1ヶ月後になる。7月は2人とも仕事があって8月は暇みたい。


「あっ!迎え来た!蒔織、楽しみにしてるね!」
と言ってういは帰っていった。

「俺も帰るかな。蒔織、楽しみにしてる。」
と言って優太くんも帰っていった。

私は2人で駅前に待っていると聞いてういと優太くんを迎えに行った。今日は運転手の如月に運転をお願いしているけど、優太くん人見知りだから不安だなあ。

「蒔織!こっち来てくれる?荷物が重くてさ…」
ういが私を見つけて声をかける。ういの荷物が重そうなので如月を呼んで荷物を持ってもらう。
「悪いわね。如月。」

「いえ、お気になさらず、皆さま車にお乗りくださいね。お乗り次第出発させて戴きます。2時間ほどのドライブでつきますよ。」と私たちが荷物を運んだ頃に如月がそう言う。3人で車に乗り込み、出発した。


ういは心地良かったのかぐっすりで、優太は人見知りだからか不安そう。私も寝ようかな。と、思っていると昨日までの激務を思い出し、すぐに微睡んできた。7月は疲れたな…


目を覚ますと、もうすぐつきそうな頃だった。携帯を見てみると、パパからのメッセージ。
『パパもママと理沙と祐馬さんと一緒に別荘に行くからね』と4人の写真と共に送られてきた。
「ふふっ」と仲良さげな4人に思わず声が漏れる。するとういが起きたようで、

「んん、そろそろ着く?」
と寝ぼけてながら聞いてきた。私が答える前に
「さっき如月さんに聞いたらあと20分くらいらしい。」と優太くんが言った。いつの間に如月さんと仲良くなったの?
人見知りなのに仲良くなるのはすっごく早いんだ
「じゃあもうすぐじゃん!ていうか、今日詩織の部屋で映画見ない?」

私たちが頷くとほとんど同時に車が止まった。どうやらついたみたい。

「着きましたよ。荷物は私が部屋まで運ぶので先に行っておいてください。」
「ありがとうございます!如月さん!」
と、ういが笑顔でお礼を言ったのを見て如月は顔を少し赤らめる。


私が別荘に入ると、早速理沙ねえが抱きつく。
「蒔織〜!久しぶり〜!元気にしてた?」
と私のことをぎゅー!と抱き締める。ていうかほとんど締めてる。それを見ているういは苦笑い。

家族ぐるみの付き合いだからこれも当たり前のように流すのはういだけ。優太くんは少し驚いたかのように見てる。

理沙ねえが優太くんに気づいたようで、少し怪しげな目をむけてこう言う
「蒔織、ういちゃん、誰?この人。」
と聞かれた。するとういが

「彼は蒔織の彼氏さんの川嶋優太くん。蒔織のことちゃんと考えてるから応援してあげてください。」最後のあたりは川嶋くんに聞こえないようにこっそりとこう言ってくれた。

「理沙、3人を玄関に留まらせておくのは失礼じゃあないかい?川嶋くん、蒔織から話は聞いているよ。有名なコンサルティング会社のの御曹司だそうだね。」と緊張していた優太くんを安心させるように優しく話していた。


「ういちゃん、久しぶり。ようこそ我が別荘へ、中に入るといいよ。」と笑みを見せて中へ入れてくれた。居間のホールにはママと初めて会う叔父さんが2人仲良さそうに話していた。そしてそこにはママと執事、メイドが2人ずつ並んでいた。

「あら蒔織、ういちゃん、川嶋くん、ようこそ。」
「理沙に大樹さんも、座って?」と優しい声色で理沙ねえとパパも座らせる。

「ああ、蒔織たちは初めて会うかしら?こちらは私の兄で沖縄の方に勤務しているの。」と叔父さんを紹介してくれた。

「初めまして、蒔織ちゃんにういさん、川嶋さん。山口祐馬と言います。よろしくね。」と、
柔らかい物腰で挨拶してくれた。

「初めまして、祐馬叔父さん。」と私も挨拶を返す。ういも川嶋くんも同じように
「初めまして。」と挨拶をする。

「皆さん礼儀正しくて素敵だ。」と私たちを褒めてくれた。するとメイドである瑠璃が私たちの元へ来て、

「蒔織様、うい様、川嶋様、お部屋の準備が整いました。」と、部屋に案内してくれた。

一旦部屋で休み、優太くんとういと夕食を食べに下へ降りようとすると、理沙ねえとママ、そして執事の和樹さんが言い合っている声がした。

【だから!里美ねえは渡さないってば!いい加減にしなさいよ!】
【で、ですから、里美の了承はあるんです!】
【うちの子を弄ばないでよ!】
【違うんですって!】


 普段はとても礼儀正しい和樹さんがどうしたのかな?3人で顔を見合わせ、下へ降りる。
「ママ?どうしたの?」

 私が聞くと、取り乱していたのか息が荒く肩を上げて呼吸をしていた。

「いいえ、平気よ。なんでもないわ。みんな心配してくれてありがとう。」
 

その後は何事もなかったかのように振る舞われ、私たちは戸惑いながらも夕食をとった。