「私の息子も今、兵士として国のために立派に戦ってくれているはずだわ」

「もう少しできっと我が国が勝利するわね」

近所の人たちがそんなことを話すのをチラリと見てから、未夏は冷めた目をして家の中へと入る。家の中に入るとずいぶんと涼しさが違う気がした。

「お父さん、お母さん、ただいま」

玄関で靴を脱ぎ、未夏は襖を開けて仏壇の前に座って微笑む。そこにはもうすでに他界した両親の写真があった。

未夏の父は徴兵されて戦場で亡くなった。それを知った母は嘆き悲しみ、未夏と未夏の兄である鉄平(てっぺい)の支えの甲斐もなく、自ら命を絶ってしまった。家族を失うきっかけとなった戦争を、未夏はとても憎んでいる。

「喉が渇いたな……」

仏壇に手を合わせた後、未夏は井戸から水を汲んでコップに注ぐ。そして庭に咲いたひまわりを見つめながら水を飲んだ。

夏の刺すような日差しに照らされても、ひまわりはしっかりと美しい花を咲かせている。ひまわりを見ている時だけ、未夏は戦争のことを忘れられた。