僕にとってヴァイオレットはまるで翼だった。ヴァイオレットが羽ばたくことで僕も飛び立つ。二人で空の彼方まで飛んで、同じ景色を見て、旅をしていく。ずっとそうだった。

でも、君という翼を失ってしまったから……。羽を失った鳥は飛び立てない。

叫んで祈ってもがいても、どうにもならないってわかっている。でも涙を止める術はない。今もヴァイオレットに触れながら止められないんだ。

どれほどこうしているんだろう。窓の外には美しい青藍で染められた空が見える。ああ、これが夢ならどれほどいいだろう。とても悲しい、でも目覚めれば君は隣で「おはようございます」と笑ってくれるそんな結末だったら……。

「ごめんね、飛び立たないんだ」

君のことだから、いつまでも自分の死を悲しんでほしくないと思っているはず。今も天国で困ったように僕を見ているはず。でも、僕は君のいない世界など生きている意味がないんだ。だから、ここから動き出せない。

まだ、飛び立てない。

まだ、飛び立てない。