「ありがとう、さっくん」

「どういたしまして」


の後に、にこり。

のはずが、にやりになっていた気がする。

どうにもこうにも自然な笑顔が出来ない。

オレの顔の筋肉、どうしたんだよ!

オレは羽依に気づかれぬよう、少し頬をつねった。

確かに痛い。

これは現実だ。

じゃなくて、筋肉だ。

どうしたんだ、筋肉!

しっかりしろ!


「さっくん、わたし席取っておくから並んでて」

「あ、あぁ」


せっかく良くできたと思ったのに、また気配り失敗。

今のでプラマイゼロ。

さっきの行動が無意味になった。

あぁ、不甲斐ない。

情けない。

しょうもない。

ワンコ先輩、しっかりしてくださいよ~というにゃんにゃんの声が聞こえる。

幻聴が聞こえるなんて、ヤバすぎだろ。

はぁ...。

ダメだ。

疲弊し過ぎて話にならない。

今すぐ帰りたい。

なぜこんな間髪入れずにデートなんてしてんだよ、バカ。

もう自分が嫌いだ。

だいっきらいだ。

と、1人脳内愚痴大会を行っていた、その時だった。