「おい、久遠」

「なんすか?」


出た、"なんすか?"。

聞かなくても分かってんじゃないのか?

こういう時こそ、察しろよ。


「お前はオレに言うことないのか?」

「あー、ないっすね」


ないんかいっ!


「本当は山ほどあるんだろ?」

「いや、ないっす。去るものは追わない主義っすし。明日から1人いなくなってどーなるかなーと少しばかりこの部の未来を案じているだけっす」

「んだよ、それ。オレのことはどーでもいいんだな」

「なんすか?拗ねてんすか?」

「バカ。んなわけねーよ」


いや、完全に拗ねてるな。

それにしても、だ。

オレは久遠に散々振り回され、色々狂わされたっていうのに、こいつは何とも思っていなかったのか?

オレはな、お前のことで悩んだり、苦しんだり、胸が痛くなったり、本気で心配したりしたってのに、何も感じなかったのかよ。

はぁ。

それだけだったんだな、オレは。

オレが入れ込み過ぎたんだよな。

今まで出会って来なかった人種だから興味が湧いちまって、考え過ぎて、おかしくなったんだな。

はは。

笑える。

あまりにも自分が憐れ過ぎて、笑えるわ。

オレは久遠に背を向けた。

オレももう言うことはない。

明日からはまた元の生活に戻るんだ。

忘れよう。

久遠のことは、

久遠への気持ちは、

今日できれいさっぱり、忘れよう。