――ガチャ。


店員が入ってくる。

久遠はこちらに背を向け、店員と話し出す。


「こちらでよろしかったですか?」

「はい、ありがとうございます」


店員が出ていくのを見送ると、久遠はオレに立ち上がるよう指示した。


「そこじゃなくて、ここに来てください」

「あ、はい」


言われるがまま、広いスペースに移動した。

オレの視線はそこに注がれた。

久遠の腕に抱えられているのは、花束だ。

まさか、これをオレに?


「ワンコ、ではなく、市ヶ谷朔空くん」


まさかのフルネーム。

動揺して、声帯が震えず、2、3秒遅れた。


「...はい」

「今までありがとうございました。これは福祉部全員からの気持ちです。1年間、本当にお疲れ様でした」

「ありがとう」


オレは久遠から大きな花束を受け取った。

勤続40年の会社を辞める時のサラリーマンのおじさんの気分になった。

まさか、こんな素敵な花束を用意してくれていたとは、考えもしなかった。

それと同時に、改めて分かった。

オレも皆が好きだったが、

皆もオレを好きでいてくれたんだ。

オレはもう我慢出来ず、泣き出した。

拭っても拭ってもとまらない。

止めどなく溢れてくる。

知っていた、

けれど、

知らなかった。

こんなにも、

こんなにも、

オレは、

この部活が大好きだったんだ。