「では私はこれで」

「え~、もう帰っちゃうの?」

「もうって言っても5時間もいましたよ。私やらなければならないことが山ほどあるので帰りますね」

「あ~あ、残念。由紗ちゃんからいっちーくんの近況聞きたかったのに~」


は?

またその話っすか。

ったく、本当に恋バナが好きなんすね。

そんなこと考えるよりも再就職のことを考える方が先だと思うが、美郷さんは顔を崩したままこちらをじーっと見つめてくる。


「いっちーくんて、市ヶ谷くんのこと?えっ、2人そういう関係?」

「歩先生まで何言ってんすか?そんなことないっすから」

「とか言っておきながら本当はカノジョがいるからってセーブしてるんじゃないの?
ワタシもそういうことあったから分かるわ。

こう、なんていうか...胸が苦しいのよねー。ぎゅうっと、ぐうっと締め付けられるっていうの?

頭では分かってても体が言うことを聞かないっていうかなんていうか...」


本当にさっきから何を1人ぶつぶつと呟いているのか。

少女マンガとかアニメとかの見すぎだろう。

私には到底理解出来ないから、後は松雪先生に任せて私は退散するとしよう。


「あの、私ほんとに帰りますので。では、また」

「あっ、ちょ、ちょっと~」

「僕が途中まで見送ってくるよ」